小鳥遊葵(たかなしあおい)のブログ

雑多なことを、気ままに書き連ねている「場」です。

2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

背中合わせ。(北日本文学賞一次玉砕作品)

普段は穏やかな太平洋を見馴れている眼に、車窓越しの牙剥き出しの海は、まるで行く手を阻んでいるようにも見えた。 窓側に坐る頼子は、走る電車に体当たりするように、あちこちで白く砕ける大波を見て、異次元の光景を眼にした子供のように、はしゃいだり、…

52歳の夜明け(北日本文学賞三次までしか残らなかった作品)

日々、滅入っていた。何もかもが気に入らない。ただ、パートではあるが、島に一つしかないマーケットで働いているときだけ、様々に降りかかる煩わしさから逃れられた。 狭い島の中での日常で、つねに周囲の評価を意識し、つくり上げた形を崩してはならないと…

書斎。

築40年以上経つ、あばら家の家の二階。 掃除もしないので、自分でも呆れるほどに雑然としているが、しかし、ここに身を置くと、妙にリラックスする。不思議なものだ。 パソコンのある部屋が書斎で、その隣、テレビのある部屋が、応接間兼くつろぎの部屋。 人…

 読書。

熊谷達也さんの新作「ティーンズ・エッジ・ロックンロール」を読んだ。 「邂逅の森」で直木賞をとった作家で、facebookでの「友だち」でもある。 この作品の舞台はおそらく、私が棲む地域。あちらこちらに日々眼にする町並みが描かれていて、何とも親しみを…

紙本~WEB。

WEBなる媒体がなかったころ、作家は紙本を主体に作品を発表してきた。 ハードカバー、文庫本、あるいは週刊誌や月刊誌の紙媒体への寄稿を仕事とし、糧としてきた。 いまは違う。むろん、まだまだ本や雑誌がメインではあるだろうが、物を書くことを生業にして…

疵(7枚ぐらい)。

朝。出社してすぐ、祥子は富永雄一郎の額に貼られている絆創膏に気づき、一瞬、その場に佇んだ。 それは富永の左の眼と眉の間に、少し盛り上がった形で貼られていて、富永はその理由を突っ込む同僚たちの冷やかしを、苦笑しながら受け流していた。 祥子はそ…

 新作。

16作目の新作が、8月に刊行されることに決まった。毎度のことだが、決まるとやはり、ホッとする。前作(現在発売中」が3月に刊行しているので、4カ月ぶりとなるが、このペースを保てるなら、年に3冊はいけることになる。 本音は3か月に一冊。年に4冊…

 討論。

党首討論を観ていた。与野党の党首たちによる、派遣法というか、個別自衛権――集団自衛権に関するものだ。 実に噛み合わせない。というよりは、与党党首で首相である阿部さんは、わざと噛み合わなくしているような気がしてならない。 やはり、与野党は拮抗し…

二束のワラジ。

ずっと二束のワラジを履いている。 官能の分野で刊行するようになってから、その思いが強くなっている。 ただ、これは思いの外しんどい。 お食事処「漁師のせがれ」という屋号の店を営んでいるのだが、暖簾を出すのがAМ11時で、途中、休憩を挟みながらも、店…

毀れた羅針盤(30枚ぐらいかな?)

昨日、富士山が世界遺産として正式に登録された、という報道がテレビを独占していたが、今朝のカーラジオから流れてくるニュースも、それに関するものが多かった。早朝五時半。普段なら、この時間に出勤するのだが、昨夜は大潮で道が冠水し、仕事場である小…

 出発点。

遅かった。書き始めたのが40歳。むろん、最初は作家になりたい、などという大それた、というか、無謀な野心はなかった。 40歳のその日まで、私には何もなかった。金もないし、何か特別に技術があるわけでもない。むろん、名誉的なことなど一切なく、このまま…

私の小説。

すべてが我流。だれに教わったのでもなく、最初から書きたいように書いてきた。 あちこちの場の投稿や感想を見ていると、書き手は単なる物語ではなく、文学という域にまで自作品を高めようとしている気構えが見え、時折、怯む。 私の思いはそんなに高尚では…

白昼夢(82枚)

「生きてたようだな」 不意に姿をあらわした龍二の顔を見ての、父の第一声だった。 八年ぶりの帰郷だった。その八年前が日帰りという慌しさだったので、いまこうして父が愕くのも無理はない。 八年という時間は、家をも変えていた。老夫婦だけが棲むには贅沢…

熟年アウトロー(500枚ぐらい)

ムシャクシャしていた。 ホテルの統括営業部長ともなれば、一応、要職、だろう。しかし、私は日々、農耕馬のようにひたすらこき使われているだけだった。一日十五時間は拘束されている。むろん、残業手当などはない。管理職にはそんなものはつかない。それが…

小説を書いています。いまは主に、「官能物」で、小鳥遊葵というペンネームで、官能文庫本十五冊を刊行し、近々、新刊が出ます。 元々は普通の小説を書いていましたが、なかなか認められません。 そこで、ここに十八鳴浜鷗というベーンネームで、普通の小説…