才能の死。
野坂昭如さんが亡くなったとのことだ。八十五歳。
晩年は脳梗塞を患い、自宅介護状態だったようだが、元気なころは、物書きとしてはむろん、歌手やコメンテーターとしても活躍していた。
いま大人気のラグビーを愛し、放しっぷりも聞き取りにくいほどの早口ではあったが、猪突猛進タイプの論客だったように思う。
小説家としては直木賞作家であり、人気もあったが、私は正直なところ、野坂さんの作品はそんなには読んでいない。
当時は野坂さんと同年代の五木寛之ばかり読んでいた。
だが、読んだ作品は好き嫌いは別にして、独特な文体を確立していることに愕いた記憶がある。
このように、昭和の才能が少しずつ消えていく。野坂さんより若い作家もだいぶ鬼籍に入っている。
渡辺淳一、井上ひさし、色川武大、開高健、半村良、山口洋子、森瑤子、少し野坂さんよりは歳上だが、吉行淳之介、遠藤周作、そして少し前には阿川弘之?
作家としての錚々たる顔ぶれが向こう岸に渡って久しい。
このような先人たちの才能を羨ましく思う。
文壇だけではなく、映画界でも大スターたちがだいぶ亡くなっている。読みたい作家が段々いなくなる。