普段は穏やかな太平洋を見馴れている眼に、車窓越しの牙剥き出しの海は、まるで行く手を阻んでいるようにも見えた。 窓側に坐る頼子は、走る電車に体当たりするように、あちこちで白く砕ける大波を見て、異次元の光景を眼にした子供のように、はしゃいだり、…
日々、滅入っていた。何もかもが気に入らない。ただ、パートではあるが、島に一つしかないマーケットで働いているときだけ、様々に降りかかる煩わしさから逃れられた。 狭い島の中での日常で、つねに周囲の評価を意識し、つくり上げた形を崩してはならないと…
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